どん底でした。ヘッドハンティングされた勤め先が倒産し、50間近にして職を失いました。なんとか知人のコネを頼り、仕事にはありつけましたが、給料は激減。今までの手取りの3分の1程度になりました。子供はいましたが、早くから夫婦でダブルワークをしていましたので、すぐに金銭的な危機ということはなかったのですが、景気のいい時の遊び癖が治らず、外泊しがち。愛想をつかした当時の妻も仕事の拠点を東京に移し、いつの間にか綺麗に言えば週末婚、事実は別居状態が始まりました。
約半年後離婚届が郵送されてきました。なんとか再生したいと思い、押印することを頑なに拒んでいましたが、そうもいかず、合意。元妻は仕事を持っているので、一人で生きていくらしい。私にももう一度やり直してくださいと、優しいやら冷たいやらどちらとも取れる言葉を残し、離婚が成立しました。
家族のための5LDKの住まいには主と猫だけ。とても広くて、とても寒い荒れ放題の住まいと化しました。
コンビニ弁当やお惣菜などを食べ、届いた郵送物を眺めると、何故か目につくのは、「○○仲人協会」、「婚活パーティー」のチラシなど。これで一生一人なんだなと思っていたけど、心の何処かでパートナーを求めていたようです。人間一人で生きていくのは難しいです。でも婚活パーティーっていうのも気恥ずかしいし、それ以上に時間が取れない。ただ無駄な時間が流れていくばかりで、家に帰ってからの唯一の友達はスマホとタブレット。いい年して夜遅くまでSNSで寂しさを紛らわせていました。
そんなある日、私のページに新しいメッセージが。
「みーつけた」
誰? と思い、急いで送信元を確認。なんと10年ほど前に知り合って、仕事も共にしたことがある女性からでした。鳥肌が立つほどの衝撃を覚えました。約10年前に知りあい、その後彼女は結婚し、完全に音信不通の状態でした。何となく気になる存在で、その後も「どうしてるのかな」と時々思い出していた女性でした。
あとはSNS上の会話が炸裂。遠距離なので、インターネット電話なんかも駆使して、長時間の会話が毎日のように続きました。どちらともなく再会を約束しました。初々しい学生のデートのようでした。加速度的に急接近。私も彼女もバツイチ。10年の月日は流れていますが、気心の知れた中でした。ごく自然に一緒に暮らすこととなり、晴れて再婚。新婚旅行も結婚指輪もまだですが、新しい物語作りをしています。バツイチからマルニになったねっていうのが合言葉です。